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これまで、「わたしたちのDX・生成AI活用事例」というタイトルで、5社の取材記事を掲載してきました(取材先は、日立ITユーザ会の大会論文をもとに選定)。今回は、これまでの5つの事例を振り返り、それぞれの記事がどのような方の参考になりそうかをまとめます。
この連載においては、業種・業態に関係なく参考になる「本質的」な部分を抽出することを心がけてきました。どの事例にも共通することは、成功の鍵は結局組織とそれを支える“人財”にあるということです。
筆者は、毎回この“仮説”を持って取材に臨みましたが、一度も例外がないどころか、事前の“期待値”を上回る各社各様の「ナラティブ(物語)」を伺うことばかりでした。
全記事に目を通していただきたいというのが筆者の願いですが、ご多忙の方も多いかと存じますので、まずご自身に関連のありそうな記事を読んでいただき、他の記事にも興味を持たれたら、ぜひ続けてお読みください。
システム開発経験がなく、ITリテラシーに不安のあったサポート部門のスタッフが、短期間で総務・人事系の業務システムを内製できるようになった事例です。
▼こんな方におすすめ!
【記事要約】
株式会社日立社会情報サービス(以下、日立社会情報サービス)では、属人性が高いために難しいとされている「サポート業務のジョブ型雇用」への移行に取り組むことになりました。そして、各部門に配置されていた庶務を1カ所に集めることで業務を標準化することをねらい、「業務サポートセンタ」という組織を発足させました。
同社が立てた方針はサポート業務のデジタル化でしたが、事業部門と違い、サポート部門にはデジタル化のための潤沢な予算もなく、推進できる人材も少ないのが一般的です。日立社会情報サービスも例外ではありませんでした。
本施策の推進リーダーは元システムエンジニアでしたが、実際にデジタル化を推進するのは、庶務や秘書の経験しかないスタッフたちで、ITリテラシーやスキルの個人差がかなりありました。
しかし、スタッフたちは自主的にスキル向上を図り、1年足らずでRPAを使いこなし、社内ホームページを作成するまでになりました。そればかりか、ビジネス価値に貢献するケースも出てきています。
コストと時間の制約で「アクセシビリティ向上」の優先順位は低くなりがちですが、制約を乗り越えて、より多くの人の要望に応えた事例です。
▼こんな方におすすめ!
【記事要約】
日立グループに対する研修のサービス中核を担う株式会社日立アカデミー(以下、日立アカデミー)は、グループ全体の意向を受けて、eラーニングのアクセシビリティ向上に取り組むことになりました。
しかしアクセシビリティの向上は一筋縄ではいきません。視覚障がい者と聴覚障がい者ではニーズが違います。また障がいがある方や年配者に配慮しすぎて、その他の方々がかえって使いにくくなることもあります。できるだけ多くの人に満足してもらえる対応をするためにはコストも時間もかかります。それでいて、アクセシビリティ自体がシステムの中心的な訴求価値になることは少ないと言えます。
そのような理由から、優先順位の低いアクセシビリティの向上ですが、日立アカデミーはUDCという方法論を採用し、関係部門を巻き込みながら乗りきることができたのです。
AI開発の経験がなかったメンバーがオープンソースやノーコードツールを活用して、加工用ロボットと連携する画像解析AIモデルを作成した事例です。
▼こんな方におすすめ!
【記事要約】
株式会社ジャパンテクニカルソフトウェア(以下、JTS)は、「食品加工におけるAI導入の実現可能性」を検証しました。具体的な目的は、カボチャのヘタ除去の省力化であり、そのためにカボチャのヘタを検出する画像認識AIモデルとヘタを除去する機械との連携システムを開発しました。
この開発は実証実験(PoC)であるがためにコストの制約が大きく、さらにJTSにはそれまでAI開発に実際に関わった人材が少ないという問題がありました。
JTSでは今後増えていくであろうAI関連の案件に対応するためにAIラボという組織を立ち上げました。しかし、ラボの実質的なリーダー以外の創立メンバーには、開発リーダーをはじめとして誰もAI開発の経験がなかったのです。
そのようなハンディがありながらも、オープンソースライブラリであるTensorFlowのObject Detection APIを利用することで高い成果を達成し、社内外から高評価を得ました。
また、「ニンジンの加工支援」「パック詰め冷凍ホルモンの均等化」「太陽光パネル上の積雪検出」といった商品を次々と市場に出し続けるようになりました。
粘り強く考え続けることで、自社にとって本当に有効なリスキリングの方法を見つけ出した事例です。
▼こんな方におすすめ!
【記事要約】
レンゴー株式会社(以下、レンゴー)では、日本でようやく「DX」という言葉が一般的になってきた2020年から「社内DX人材」育成の取り組みをしてきました。
取り組み当初からレンゴーが掲げていた目標は、「業務部門による自律的な分析の実現」という極めて高度なものでした。その目標を達成するべく、取り組みの主体である情報システム本部はAutoMLソリューションを導入し、データ分析の実践的な研修をすることに決めました。パイロット部門にはリテラシーの高いR&D部門を選定し、1人の受講生も落ちこぼれないことをめざしました。
結果として、受講生全員がAutoMLを操作できるようになり、データ分析への理解も深まり、上層部からは肯定的な評価が得られました。しかし、最終目標である「業務部門による自律的な分析の実現」を一足飛びに実現するのは、このままでは難しいという反省もありました。
その反省を踏まえて情報システム本部は、データ分析手法の研修以前に、社員のレベルに応じた2段階のステップを用意しました。その結果、人材育成が軌道に乗り始め、目標達成の道筋が見えてきたのです。
「クラウドネイティブ」な方法論とアジャイルな進め方を採用したことで、短期間で信じられないような成果を挙げた事例です。
▼こんな方におすすめ!
【記事要約】
株式会社オーイーシー(以下、OEC)は、1966年というコンピューター創成期に設立された、歴史の長いIT企業です。地元大分県への地域貢献に積極的に取り組んでおり、その一環として「地域消費喚起プレミアム商品券支援事業に伴うWebサイト構築」を請け負うことになりました。
開発リーダーは、当時クラウドネイティブな開発の経験がなく、レガシーなWebシステム構成で実現しようとしていました。そこへDX先進企業のプロジェクトに複数参画した経験を持つ有識者としてSTO(Senior Technology Officer)の担当がキックオフミーティングに参加。クラウドネイティブな構成に変更し、アジャイル方式で進めることを進言し、自らもプロジェクトに参画して開発リーダーを後方支援することにしました。
アーキテクチャーと開発体制および推進方法の変更が功を奏し、最初のリリースに必要な機能を7営業日ですべて実装できました。また1カ月後のリリースにおいては、1時間で180万件を超えるアクセスに対して、障害なしで乗りきることができました。
その上、運用コストの大幅削減や、以後の同一事業では随意契約でのリピートがもらえるようになるなど、OEC全体にとっても多大な利益をもたらす案件となったのです。
著者プロフィール: 森川 ミユキ(もりかわ みゆき) IT変革を人間の物語に紡ぐDX/AXナラティブライター。1987年に大手SI企業に入社し、数多くのシステム開発プロジェクトにインフラ技術者兼マネージャーとして参画する。営業企画、コンサル営業を経て、ITコンサルタントとして独立。その傍ら2007年に執筆活動を開始。2014年からライター専業となり、主に経営者やビジネスパーソン向けにAIやDX、デジタルマーケティングをテーマとした執筆を行ってきた。日本ディープラーニング協会G検定合格。
